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ユーザビリティテスト実践編 2
全体設計:5つのポイント(後半)

2007.05.18カテゴリ:ユーザビリティ

ユーザビリティテスト5つのプロセスのうち、1番目の「全体設計」についてです。

どんな人を対象にユーザビリティテストをすればいいの?
「サービスへの興味・関心」が、最大のチェックポイント。

今回は、ユーザビリティテストの「全体設計」で考えるべき、残り2つの質問を見て行き ましょう。

  1. どんなタイプの人に協力してもらうのか?
    … (リクルーティング条件)
  2. いつ、どこでテストを実施するのか?
    … (スケジュール、場所)

4-1.誰を対象に?(リクルーティング条件)

インターネットスキルの前に、興味・関心をチェック!

ユーザビリティテストに限らず、ユーザー参加型の調査を行うときは、どんな人を対象に するか、すなわち、リクルーティング(=テスト協力者の募集)の条件が大切になってきます。リクルーティ ング条件と言うと、とかく、「年齢」「性別」「職業」「インターネットスキル」などの ユーザー属性を真っ先に考えがちですが、そこには大きな落とし穴がひそんでいます。

それは …

それらのユーザー属性を考える順番です。

最初に押さえるべきは、「その人は、サイトに来ていただきたいユーザーか?」、言い換 えると、「サイトが提供する商品、サービス、情報にどのような興味・関心があるか」と いう『サービスに関する属性』であって、年齢や職業ではないのです(下図参照)。当た り前のように聞こえますが、この順番を間違えると、微妙なズレが生じ、思ったようなユ ーザーが集まってくれない大きな要因になります。

サービス属性を押さえるために、多くの場合は、間接的に(=興味・関心を Yes/No で聞 かずに)「そのサイトで解決できるような問題、状況を抱えていないか」を尋ねることに なります。これは、その人がターゲットとしての条件を備えていても、興味・関心を持つ レベルまでは至っていないケースがよくあるためです。(逆に、そのような興味・関心を サイト内で喚起できるかが、ユーザビリティテストで見るべきポイントになってきます)

サービス属性を押さえるための条件(例)

  • 子どもに「ひらがな」を覚えさせたい (幼児教材販売サイト)
  • 家族が増えるので車を買い換えたい (中古車オークションサイト)
  • 毎年、忘年会の幹事をさせられ大変 (レストラン情報提供サイト)

年齢や職業などの『基本的な属性』は、この『サービス属性』をコントロールするための 手段であると考えても構いません。なお、スキル、経験などを含む『インターネット属性』 は、特に、検証するタスクの技術的難易度が高い場合(例:お申し込みフォーム)に影響 が大きくなってくるため、慎重に定める必要があるでしょう。

4-2.何人を対象に?(人数)

目安は5人。しかし、それで安心してはいけない!

IA lab が行っているセミナーなどで、企業の Web 担当者の皆さんから最もよく聞かれる 質問の一つが、「何人のユーザーでテストをすれば十分なのか?」というものです。ユー ザビリティの第一人者であるヤコブ・ニールセン氏は、自らが行った調査によって、

「5人を対象としたユーザビリティテストで、85%の問題が見つかる」
(下図参照)

ことを明らかにし、一度に多くのユーザーに対してテストを行うよりも、5人のテスト を繰り返し実施した方が、効果的であると主張しています。

ユーザーの数と発見できる問題の関係を表すグラフ。ユーザーの数が少ないところグラフの傾きが大きく、一人のユーザーの影響が大きいことを表している。一方、ユーザーの数が10人を超えるとグラフの傾きは0に近づき、ユーザーの数を増やしても発見できる問題の数にあまり変化がないことを表している。このグラフによると、ユーザー数5に対し、85%の問題を発見できることになる。

ユーザーの数と発見できる問題の関係

この『5人』という数字は、あくまでも平均値をもとにした目安であり、『85%』の問題 発見を保証するものではありません。ここで重要なのは、対象とするユーザーの数を増や せば、それに比例して(=そのコストに見合うだけ)効果が上がるわけではない、という 点です。勝負どころは、(5人のユーザーを確保したうえで)1回あたりのテストの精度を いかに上げるか、なのです。

例えば、テスト1回の精度が30%低下した場合、全体で70%の問題しか発見できません。 裏を返すと、発見できなかった問題が倍に増えた(15%→30%)ことになります。

また、ニールセン氏自身が認めているように、より多くのユーザーを対象にすべきケースも 少なからず存在します。最適な人数の見極めには、十分な考察と注意が必要です。

5人より多くのユーザーが必要な場合(例)

  • はっきりと性質の異なるユーザーグループが複数存在するとき
    (特に、ニーズ、意思決定プロセス、行動において)
  • テストする対象によってグループがはっきりと分かれるとき
  • グループ間の違いを知りたいとき(初心者 vs. 熟練者、など)
  • 定量的なユーザビリティテストを行いたいとき、など

5.いつ、どこで?(スケジュール、場所)

PC1台でも可能。でも、テスト環境には十分配慮を!

ここまで見てきた、目的、対象、ユーザーの人数などが決まれば、テスト全体の規模感が 見えてきますね。5人を対象にした通常規模のテスト期間は、約4週間。全体設計+タスク 設計で1週、リクルーティングを含む事前準備に1.5週、テスト実施+集計分析で1.5週、 といった具合でしょうか。テスト実施日は、リクルーティングの都合上、後になっての変 更が難しいので、スタッフの日程調整を済ませ、会場を確保するのと同時に決めるのがコツです。

テストは、1台の PC とインターネット接続環境があれば、基本的にどこででも実施可能 です。専用のスペースが必要となるケースは、ほとんどありません。とはいえ、通常の利 用状況とかけはなれた場所での実施は、ユーザーの行動や心理状態に不自然な影響を与え る恐れがあるため、慎重に検討してください。(悪い例:自宅利用を想定しているサイト のテストを、騒がしいオフィスの、人目があるオープンスペースで行う)

以上、ユーザビリティテストの「全体設計」についてでした。

参照リンク

Alertbox: 5ユーザでテストすれば十分な理由, U-Site,

Nielsen, J 2000, Why You Only Need to Test With 5 Users (Alertbox), useit.com, viewed 17 May, 2007,

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